少し立ち止まるところ

無機化学、放射化学、での講義の最初に、原子の構造を復習する。そこで、原子にも寿命があるが、素粒子の寿命もあるという話をされる。そこで、「カミオカンデの当初の目的は、陽子崩壊の観測であった」と先生が少し立ち止まったのであった。

標準模型では、陽子の寿命は無限であるとされているが、大統一理論では非常に長い時間をかけて崩壊することを予言しており、一つでも崩壊を確認出来れば、また一つ真理に近づけるのである。

さて、小柴先生は最高齢のゲーマーともいわれており、ファイナルファンタジーをプレイしていたそうです。当時の情報から、私もプレイしていたFFⅤをされていたのだと思います。

小柴先生の話は何か元気にさせる力がありました。小児マヒで、何時間もかけて学校に通った話などもありました。また、年頃に、風呂に入るときに女性に体を拭いてもらったのが辛かったとも話されておりました。失恋で睡眠薬を飲んで自殺をして、胃洗浄をされて、それから何故か生きていかないとと思ったと、語っておりました。面白い事に、それからは、不思議な快活さがあったようです。理論物理学が難しくて、何をやろうかと思ったとき、宇宙線が原子核乾板に当たって、その距離を測る実験を知り「これなら私も出来る」と感じて、宇宙線の研究を始めたという言い方をされていました。

小柴先生のご自身で話された公演のCDは今も売られているのではないかと思います。(先ほど見たら売り切れになっていました。題名は「小柴昌俊 やればできる、心に夢を!」だったと思います。)

私は、小柴先生の話の内容は、どこにも無駄が無いと思いました。余計な言わなくてもいい事なんてないのです。また、文脈とかもいりません。人生はそういうものだと思います。そのジャンプがとてもリアリティがあります。人間は、ある時に急に変わったように見えるかも知れませんが、無意識ではものすごい事がずっと起こっていて、それが周りや自分が分かるときに、急に変わったようにセンス出来るのです。私も若いころに挫折をしてどうやって立ち直れたのかわかりませんが、周りの良い影響もあり、なんとか普通ぐらいにになったのでした。しかし、それから楽になったかというとそうでは無かったです。それからの方がずっときつかったのですが、気持ちは平気だったのです。小柴先生は、成し遂げた方で、だから全部話しても良いのかも知れません。テレビの取材でも全部話しておりましたが、テレビだとインタビュアーが変にフォローを入れてしまいます。そうでは無いのですよ。そのまま安心して受け入れて、そのままを表現して下されば、気持ちいいのです。色々抱えている方に、小柴先生のエピソードを紹介したことがありました。すると、その方もやっぱりわかったのです。他にもそういう方が沢山いらっしゃると思います。今の自分を受け入れられて、生きていこうと思わせるような力があります。

CDでは浜ホトと小柴先生がやり合っている所も紹介されていたと思います。誘惑したり、目的を共有していくところや、達成した後の両者の心境も含蓄が深かったです。人間はいい事も悪い事も共に経験して信頼関係が勝手に出てくるものです。
https://www.hamamatsu.com/jp/ja/index.html

数年前まで、浜松ホトニクスはホームページで社長が「絶対真理の追求」と書いておりました。私はそれを印刷して前の事務所に貼ってありました。今もどこかにあるはずです。そして、みんなに言っていました。「うちが、絶対真理の追求なんて言ったらよ。アホか?オカルトか?って言われるだろう。日本の国旗なんか掲げていたら、やばい会社かって思われるだろう。絶対真理の追求って言っても、変に思われないようになりたいんじゃ。国旗を掲げても別に何とも思われないようになりたいんじゃ。」と言っていました。浜松ホトニクスが絶対真理の追求と言っても、ものすごく説得力があります。そこの製品は、それをやっているのですから。

堀場製作所は「おもしろおかしく」を社是にすると創始者が言うと、役員全員の反対にあったとか。それから月日がたち、何かの記念で、お祝いをしたいと申し出られたとき、「おもしろおかしくを社是にしたい」と言われて、しぶしぶ社是になったのだとか。

「絶対真理の追求」、「おもしろおかしく」、いいではないですか。製品、装置を見るたびに、それらのメッセージを想起しています。

さて、弊社の製品を使って、そう思ってくれる人はいらっしゃるのでしょうか。ぱっと見かけたとき、良い事を想起するものであって欲しいです。